少し間が空きましたが続きです。
アトピー症状に対して、漢方薬で治療をしたいと言う希望は多いです。また時々テレビなどで漢方薬の治療法が紹介されると、その紹介された処方が良く売れるようになったり、小児学会などで、漢方薬を使った改善例の著効例などが紹介されたりすると、それが新聞に掲載されて問い合わせが増えたりすることが今までに何度かありました。また有名人の方の子供さんが中国の中医師にアトピーをよくしてもらったという番組があり、その後ツアーまで企画されたと言うのもありました。こういったブームのようなものがきっかけで、漢方薬をお使いいただくケースも結構あります。
では、まずは現在の主な漢方の状況からお話しましょう。
漢方薬は現在、お医者さんから処方される医家向けの漢方薬、薬局、薬店で買える漢方薬があります。お医者さんの漢方薬はほとんどが健康保険で出される「保険収載品」と言うものが多いです。
一部の漢方を専門とされるお医者さんのところで自己負担をしながら処方を出されることもあります。
薬局、薬店で買える漢方薬にはお医者さんが処方箋で出されるお薬とほぼ同じ内容のお薬があるのですが、このほかに、中国の製剤や、和漢薬という日本の伝統的な製法の生薬製剤などもあり種類が多いのが特徴です。また、値段もさまざまで、良い材料は加工に手間のかかる処方、高貴薬などが配合されていたりすると効き目は良いですが値段も高いと言うのもあります。
また、漢方製剤のメーカーも結構たくさんあり、それぞれに特徴がある製剤が手に入ることもあります。漢方薬は処方の名前が同じなら本来同じお薬のはずですが、実際使ってみると効き方に差があるように感じることが多々あります。
これらを経験的に知ることで、大手のメーカーではないが、この処方はこのメーカーがよいと言うのも結構あります。原料が生薬という自然のものを使いますから、原料の選別、加工の仕方、製剤の作り方によっても薬の性質にずいぶんと差が出ます。
このあたりが、健康保険で一律にどこでも同じ医療と言うのとは異なってきます。
あと漢方薬の種類としては、粉薬(エキス剤、生薬散剤など)、煎じ薬、錠剤、丸剤、塗り薬などがあり、それぞれ治療目的や、飲む方の好みに応じて利用されています。これらの剤形は薬の効き方に大きな影響を与えることも多いです。一般的には生薬の生に近い形の薬が効き目が強く、錠剤のように賦形剤を加えたものは生薬内容が薄いのが多いので効き方が穏やかです。
アトピー性皮膚炎の治療に漢方薬を使う場合、最近の主流の考え方では、その漢方薬が症状を抑える(痒み、皮膚のただれ、赤み、かさつきなど)目的の処方なのか、体質的なものを丈夫にしていく処方なのかを選ぶことから始まります。
症状を抑えるものは「標治法」といい、根本的な体質治療を「本治法」と言います。
この2つは薬の効き方が全く違い、「標治法」に使われる処方は主に即効性を期待し短期間で症状の改善を狙います。「本治法」の処方はゆっくりと、しかし確実に病態を改善していける、体作りを目指すお薬です。
ですから、「標治法」の漢方処方を長期間飲んでも症状はある段階から一進一退を繰り返すことが多いです。
また、最初から「本治法」の漢方処方を飲んでも、効いた感じはなかなかえられませんし、症状によっては一時期悪化してしまうこともあります。この2つの方法をどのように使い分けるかは、アトピーの患者さんと治療を進めていく上では、いつも頭を悩ませる課題になります。
これを全くわからずに長い期間、何年にもわたって漢方薬を飲んでいることも良くあります。本来ならもっと以前に本治に行かなくてはいけないのに標治のままの方もよくお見かけします。
ただ、これは明確にこの時点で切り替えようとは言い切れないのが厄介です。
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